経口血糖降下薬 (NEJM Clinical Practiceより)
経口血糖降下薬に関するNEJMのCliniacl Practice (N Engl J Med 2021; 384:1248-1260)を読みました。
要点は以下の通りです。
N Engl J Med 2021; 384:1248-1260 より筆者訳
血糖コントロール目標と細小血管症、大血管症について
糖尿病の合併症は以下の2つに大きく分かれます。
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細小血管症:網膜症、腎症、神経障害
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大血管症:冠動脈疾患、末梢動脈疾患 (PAD)、脳血管障害
血糖コントロールと糖尿病合併症の関係について、UKPDS33試験では厳格な血糖コントロールで微小血管障害は減らしたが、心筋梗塞は減らさないという結果でした。また、ACCORD試験では、強化療法 (HbA1c 6%未満) で心血管疾患による死亡、および全死亡が増加しました。日本の糖尿病診療ガイドラインでは合併症を防ぐためのHbA1c目標が7.0%とされていますが、それより下げても大血管症は予防されず、生命予後に寄与しないことが関係していることでしょうか。
ビグアナイドが第一選択であり、大血管症予防効果がある
大血管症予防に関してエビデンスがあるのはGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬である
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心血管疾患をもつ2型糖尿病患者で、リラグルチド (ビクトーザ®) とセマグルチド注射 (オゼンピック®) は心血管イベント二次予防効果あり (ビクトーザはLEADER試験、オゼンピックはSUSTAIN6試験)
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心血管高リスクの2型糖尿病患者で、デュラグルチド (トルリシティ®) は大血管症予防効果あり (REWIND試験)
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心血管疾患またはCKDのある患者で、経口セマグルチド (リベルサス®) は心血管イベントの発生に関してプラセボに非劣性であり、心血管安全性あり(PIONEER6試験)
SGLT2阻害薬に関しては、以下のようなエビデンスがあります。
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エンパグリフロジン (ジャディアンス® )は大血管症二次予防効果あり(EMPA-ROG OUTCOME試験)
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カナグリフロジン (カナグル® ) は心血管イベント発生を抑制する (二次予防症例だけでなく、一次予防症例も含まれる) (CANVAS試験)
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ダパグリフロジン (フォシーガ®) は心血管疾患による死亡や、心不全による入院を抑制する (DECLARE-TIMI58試験)
また、大血管症予防のためには個々の患者に応じて心血管リスクの軽減も重要です。運動習慣の推奨や禁煙はもちろんのこと、肥満がある患者ならば、減量効果のあるGLP-1受容体作動薬を用いる...などです。
【参考文献】
Kalyani RR. Glucose-Lowering Drugs to Reduce Cardiovascular Risk in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2021 Apr 1;384(13):1248-1260. doi: 10.1056/NEJMcp2000280. PMID: 33789013.
HFpEFに対するSGLT2阻害薬の効果はまだ載っていませんが、非常によくまとまっています。絶対必読論文です。
糖尿病トライアルベース 各臨床試験について、わかりやすくまとまっています。